思想元ネタ集
前説
- 思想は自由・秩序・独裁の3つに分かれており、それぞれが自由主義陣営・共産主義陣営・枢軸主義陣営をモチーフにしている(と思われる)。
だが採用されている社会制度の内容はあまりこういった分類と関係ないものが多い。
- ここでは各思想とそこに至るまでの歴史の流れを綴っているが、どの思想においても大事な点は「それは『結果』であり、そこに至るまで歴史上の大きな要因が連綿と続いている」という点である。Civ5で無意識・機械的に行われる「天文学・航海術の発明→キャラベルによる外洋への進出→産業時代への突入→工場の建設(購入)→思想の取得」という短時間で、現実ではこれほどの混乱と革命が起き、その結果として中世における宗教並に曖昧かつ国境を超えた『大きな敵と味方の区分』すなわち思想ができたのである。
- 言うまでもないが、シド星も現実も「歴史は勝者で作られる」。これらを真に鵜呑みにした結果「(勝者の)主流思想から外れて」「極度の不幸状態」に陥ったとしても、Civilization5を起動して最初に表示されるウィンドウの警句の通りである。厳然たる歴史の暴威に対して、人の心、世の空気はかほどに脆いのだ。
自由(Freedom)
前説
- 自由つまり自由主義というものは、かつての絶対王政・神授王権へのアンチテーゼとして成立した。
絶対王政では王(権力者)こそが絶対至上であり、国王大権により(徴税や人頭税と称して)財産を奪うことも許されていた。
もちろん絶対王政下では民衆の個々に権力はなく、全ては国王に認められ任命された封建領主が代行していたのである。
- 一方で貨幣経済の伸長と金本位制の混乱、産業革命による商品価値の騰貴暴落や大航海時代による没落国の増大*1などにより、旧大陸の労働力・生産力と貨幣の交換レートに大きな溝ができ始めていた。
特に大航海時代が一段落すると、北アメリカからは大量の租税とビーバーの毛皮が、南アメリカからはポトシ銀山に代表される大量の金銀が、それぞれ旧大陸に流入したことにより価格革命が発生し、旧大陸では激しい騰貴(インフレーション)*2が始まり、それの流通を掌握する商人が異様に儲かって従前の安い地代と小麦しか取れない封建領主はどんどん没落していった。
Civ5でいえば、隊商も交易船も出さず都市間道路も引かない国が財政問題で没落し、代わって隊商や交易船で金を儲けている文明が躍進するようなものである。
- またそれに伴って農民も物価の騰貴と徴税の強化により農具などを買う金が不足し、生活が苦しくなって土地を捨て後述の工場都市に逃げ込む者も多くなった。
その結果、今まで領主荘園を主体とし農家によってあちこちに分散していた小さくゆるやかな社会の乱立が、産業革命によって工場を母体とする大きく緊密な社会へと変貌したのである。
Civ5で工場を建てると思想が始まるのも、こうして工場を建てた都市に工員とその家族が引っ越してきて人口が集積し、その中から思想家が現れたためであると思われる。
- この激動の変化に旧態然とした国家はロクに対処できず、商人が新大陸からもたらす莫大な富を、旧大陸の貧しい領民を搾り取ることで贖おうとしていた。
つまり、新大陸からの珍品を買うため、領主はこぞって民衆から財貨を搾り取り、なけなしの財貨を商人になげうってやっと手に入れ、商人はもっと珍品を増産しようと奴隷貿易や強制移住によってアフリカ人や先住民を大規模農園(プランテーション)に送り込んでいたのである*3。
言い換えれば、もはや貴族は悪徳商人*4から物を買うために税を搾り取るだけの存在に成り果ててしまい、後述のように民衆はそういった貴族と商人の横暴から抜け出す自由を欲したのである。
また、そうして商社がしばしば一国家よりも大きな収入をあげ、それを"資本"に国政に関わっていたことなどで自由資本主義の下地ができ始めていた。
ある意味、現代日本におけるスマホアプリやコンプガチャに通じる問題といえよう。
- このような浪費と横暴に対抗する形で「個々人は財産(富)を持ち、それを元に(国家権力に囚われず)自由にあるべし」という市民革命が起こり、自由主義の始まりとなる。
この市民革命の代表的なのがアメリカ独立戦争であろう。有名な「代表なくして課税なし」や「人民の、人民による、人民のための政治」とは、
つまり代表すら置かれず、人民のための政治など無視され、ただ税金や生産物だけを搾り取られていたわけで、まさしく自由思想の萌芽となったのである。
その後も社会契約論などといった修正を加えつつアメリカの国是として、また現代では多くの国が採用している思想として息づいている。
- もう一つの潮流として「総力戦による民衆の国家への不満」というものもあるが、これは下記独裁の総力戦に譲る。
ともあれ、「国家が個人の集合に優越する」という時代を終わらせたのが自由主義である。
- この自由主義思想は当時の先進国では非常に意義あるものとして受け止められたが、日本を含む当時の中流国では様々な問題を孕みつつ受け止められていた*5。
結果、こういった理想論よりも「大航海時代で悪名を極めたイギリス・フランスがいるかどうか」というさらに曖昧な区分で"連合国"という概念ができ、それに対抗する各国が「共産国」「枢軸国」と言い習わされたのである*6。
レベル1
- アバンギャルド
元は「前衛部隊」を意味する言葉であり、旧来の表現に宣戦を布告した先進的な芸術運動と定義されていた。
…のだが、今日では俗に「訳がわからないよ」としか言いようのない何かを揶揄して使われている感がある。例えばデュシャンの「泉」は今でもアバンギャルドである。
最も有名なものは革命及び社会主義リアリズムと不可分のロシア・アバンギャルドであろうか。…あれ?
- 創造的表現
シヴィロペディアによれば国家が表現活動を統制しない状態を指すらしい。いわゆる表現の自由。
効果から察するに個人が傑作を自由に解釈する事でより豊かな想像が生み出される、といった感じか。
あるいは逆説になってしまうが、枢軸陣営や共産陣営における「無価値」な芸術の弾圧、破壊*7を念頭に入れているのかもしれない。
- 国民皆保険
市民全てに医療補助を保証する制度を指し、1937年にソ連によって制定されたのがその始まりである。
この前身となる社会保険制度を初めて打ち立てたのはオットー・フォン・ビスマルクである。
なお国民皆保険を採用していない先進国としてアメリカ合衆国を挙げる事が出来…たのだが、近年オバマケアと呼ばれる医療保険制度改革(実質国民皆保険)の施行が確定するに至った。
- 市民社会
個人の自由が保証される事によって成立する社会を指す、との事。例えば戦前の隣組はここに含まれない。
その意味で、憲法による各種自由の保証は市民社会の存在を担保しているという事にもなる。
- 秘密工作
十中八九CIA(アメリカ中央情報局)やMI6(イギリス秘密情報部)の工作を意識しているのだろう。
冷戦やベトナム戦争の時代にもこれら自由陣営の情報組織はKGBなどと情報戦を繰り広げている。
効果の内容から考えると南米大陸への工作(PBSUCCESS事件やチリ・クーデターなど)、
朝鮮戦争におけるKCIAの設立などを指すものと思われる。
- 経済同盟
説明ではEUのような国家間の経済統合(Economic Union)を示しているが、EUは大戦期より大分後の設立でありカリブ共同体も思想教条と言うには微妙である。
そこで、時代背景と連合国陣営の思想、およびその効果からこれはほぼ「ブロック経済」のことを指していると見て間違いない。
第一次大戦の終結後に訪れた世界恐慌により金本位制が崩壊したため、金は世界に通用する普遍的な"価値"ではなくなった。
この事件から回復するため、植民地を保有する各国は植民地との間に特権的な関税低減を設け、逆にライバルたりうる国との関税を高額にした。
これにより各国は経済的植民地を作って分離し、そして経済的にライバルを蹴落とすために各国が争うことになり第二次大戦および思想戦争への下地となったのである。
特に付かず離れずだった欧州は「スターリング(イギリス)」「フラン(フランス)」「マルク(ドイツ)」「イースタン(ロシア)」の4つのブロックに別れ、後の思想分立の下地になった。
また日本・アメリカも「円ブロック」「ドルブロック」を作り(日本については作らざるを得ず)、後にこの両ブロックは争い合うことになる。
その効果「同じ思想(自由思想)との交易路で+3(他思想陣営ではゼロ)」はまさにブロック経済である。
- 資本主義
結果的に生まれたものなので起源の特定は難しいが、産業革命と賃金労働者の増加によって本格的に興隆したのは間違いない。
このゲームでは金融、及び貨幣政策による個人の富の増大が幸福の増加として表現されていると思われる。
あるいは金融政策を上手く行えば景気が良くなって世相が明るくなる、という話なのかもしれない。
何にせよ労働力や資本を富として定義し、その富の集積と変換と分配が資本主義の特徴である。
…そういう意味では、兵士や放送塔を作り出してしまえるCiv5のゴールドは「金銭」というより「富」である。
レベル2
- ニューディール政策
主にケインズの理論による公共事業拡大及び失業者救済によって知られるが、緩やかなインフレを志向する金融政策との合わせ技でもある。
アカデミーやランドマークの算出が増えるのは何故と思う向きもあるだろうが、この政策には対数表プロジェクトなる研究への助成も含まれていたんだとか。
なおこの政策の先駆者が高橋是清であり、後継者が前FRB(連邦準備銀行)議長ベン・バーナンキなどである。
また、civ4のルーズヴェルトが社会制度の重商主義を好んだのは、この政策に由来していると思われる。
- 志願制軍隊
効果を見ると志願制軍隊というよりは外人義勇兵である。
それもそのはず、元々は「Volunteer Army」(義勇軍)で、日本語訳が間違っているのだ。例えば「フランスの自由を救」う為に来援したガリバルディの赤シャツ隊などのような。
余談になるが今日において多くの国が志願制を採用している理由としては、兵器や戦術の複雑化によって兵士に要求される知的水準が急上昇した事、
及び予算の都合で少数精鋭を志向せざるを得なくなっている事などが挙げられる。
現実では志願制にすることで維持費が跳ね上がるが、ここでは維持費がなくなるのを気にしてはいけない。
- 普通選挙
(男子)普通選挙が初めて制度化されたのは1848年のフランス、女子は1893年のニュージーランド。日本では男子1928年、女子1945年。
制限選挙下において投票権を持っていそうなCivの専門家が生み出す不幸が半減するのは変な感じだが…逆に考えるんだ、一般市民のやっかみが減るとか。
ちなみに昔のCivでは婦人参政権が遺産として扱われており、共和制及び民主主義において軍事ユニットが産出する不幸を軽減する効果があった。
- 栄光の時代
バトル・オブ・ブリテン(ドイツによるイギリス本土侵攻)に際してチャーチルが演説した「their Finest Hour」を指し、
イギリスおよび英連邦における全体主義への抵抗を鼓舞する一節をなしている。
初出の際の文脈は「if the British Empire and its Commonwealth last for a thousand years, men will still say, "This was their finest hour"*8」。
文才に優れたチャーチルの数ある名言の一つに数えられている。
- 民主主義の兵器廠
原文は「Arsenal of Democracy」。フランクリン・ルーズヴェルトの演説が初出。
自由陣営の勝利を目指して自国の民間企業に全力で軍需製品を生産させ、枢軸陣営に対抗させる事を示唆している。
実際にルーズヴェルトはレンドリース法によってイギリス、フランス、中華民国、ソ連などの枢軸国と直接相対する国家に大量の軍事物資を供給した。
上記の「their Finest Hour」と合わせて某ストラテジーゲームの拡張パックのタイトルになっていたりするのでそのプレイヤーには馴染み深い単語かもしれない。
攻撃的な政策が必要なのだ!
- 都市化
都市化というとピンとこないと思われるが、高層建築物や集合住宅などの集積によって特定地域に大量の人間が住み始めることを指す。
つまりセメントなどの建築物資の進歩、高層建築や分譲アパートメント*9などによる土地の効率的利用、バウハウスからの機能主義の伸長などが合わさった概念といえる。
特にそれまでの建物から面積当たりの世帯や労働力を増やせる高層建築技術が興隆した点と、電気技術(特に電灯照明)の躍進による労働時間の増加という点が大きい。
その恩恵を最も強く浴びたのがアメリカの高層建築であり、1870-1900年あたりのマンハッタンはまさしく摩天楼となったのである。
もっとも、産業革命及び資本主義の始まりを告げたロンドンの大都市化はむしろ住民の不幸を呼び起こしたような気もするが。
レベル3
- メディア文化
マスメディアが世論操作に使われる云々とシヴィロペディアにはあるが、このゲームで喚起されるのは他文明に対する観光力である。
おそらく有名メディアを通じて全世界に自国文化を輸出し、やがてそれが世界を染め上げていく…という構想であろう。
日本でいえばアニメ文化が世界に輸出され、またアメリカ文化がD-lif○で世界中に知れ渡っていくようなものである。
内容的には広告媒体の進化(飛行船やラジオ、テレビなど)とそれによるコマーシャリズムの伸長を指すものと思われる。
- 宇宙関連資材の調達
宇宙開発計画を推進する際に必要な資材を民間から調達する、という事は実際にNASA等によって行われている。
というよりもそういう物を国営企業ではなく民間企業から調達し、国内経済に還流することこそが資本主義の本懐なのである。
なおNASAの場合は国外からもパーツを調達しており、例えば日本の町工場に精度の高い部品を発注している事がよく知られている。
- 条約機構
複数の国家が軍事力を一つの組織に統合する事を目的としており、NATO及びこれに対抗して成立したワルシャワ条約機構が特に有名。
どちらも超大国一つとその他という力関係の軍事同盟であった。だからフランスがグレたんですけどね。
秩序(Order)
前説
- 秩序とは言うが、内容的には共産主義そのものである。よって共産主義の源泉であるソビエト連邦の概要を述べる。
- 共産主義のそもそもの始まりは、ソ連以前にロシアを支配し絶対王政を極めていた帝政ロシア*10のグダグダっぷりにある。
- 極めつけのグダグダ政権であった帝政ロシアは第一次大戦でさらにグダグダっぷりを極め、戦死者500万人以上という大損害を出して敗退し厭戦気分が蔓延していた。
- さらに革命直前の帝政ロシアは絶対王政と保守思想に凝り固まっており、その中で日露戦争に敗れたことは帝王の座と権威を大きく揺らがせることになった。
- おまけに従前の帝政ロシアでは農奴制を敷いており、末期では近代化のために農奴制をやめさせようとしていたのだが、
代わりに地主貴族の権力を非常に強くした*11ためにそれに隷従される民衆に不満が溜まっていた。
- 有名な怪僧ラスプーチンも、この頃に夫ニコライ2世が第一次大戦に出征したのをいいことに皇后アレクサンドラに取り入って内政や宮廷人事などを取り仕切り、それ(と、アレクサンドラがドイツ出身だったこと)も民衆の不信を煽っていた。
- これらが合わさって民衆が起こした暴動・蜂起がロシア革命(十月革命)につながり、ソヴィエト結成・ボリシェヴィキ結成・メンシェヴィキ打倒*12、そして共産主義国家成立からのソビエト連邦樹立につながる。
- アンチ権威主義・アンチ絶対王政という点では自由主義と変わらないが、最大の違いがこの革命を推進したのが民衆ではなく「ロシア社会民主労働党」だった点と、
これを率いていたレーニンが「暴力革命*13」と「中央集権」を旨としていた点である。
それゆえグダグダだったとはいえ当時の強国だった帝政ロシアを打倒できたのだが、レーニン自身が敵を作りやすい性格だった上
後任のヨシフ・スターリンが凄まじい権力主義者だったせいで今でいうソ連赤軍の暴力的なイメージが定着した。
- これら共産主義は「アンチ・ブルジョワジー」として解釈され、イギリス・フランスと明確に決別できるうえにソ連の支援を得られるということで、
大航海時代にイギリス・フランスら連合国に支配されていた元植民地などが、上述ロシア帝国のような事情がないにも関わらず賛同し共産化していった。
レベル1
- ピオネール
英語にすれば「pioneer」つまりパイオニア。要はソ連製ボーイスカウトである。色は違うがネッカチーフを巻くところも共通している。
そしてこちらも「将来有望な若者を量産する」という点では同じだが、加入するには厳しい条件があり、結局党幹部へ昇進するためのエリート養成所という感が強い。
ゲームにおける効果はこんな感じだが、元ネタ同様にキャンプがお約束だったりもしていたらしい。
- 二重スパイ
つまりスパイの中にいる敵スパイ。BNWで実装されていたら面白かっただろう。
Wikipedia先生によれば、孫氏の時点で二重スパイの作り方が書かれているんだそうな。
イギリスは二重スパイを活用する事で、連合陣営の上陸地点をノルマンディーではなくパ・ド・カレーと誤認させるフォーティテュード作戦を成功させている。
しかしそのイギリスも二重スパイであったキム・フィルビーにいいようにされてしまったのだから皮肉なものである。
- 国民的英雄
ソ連の場合は軍事関係者が「ソ連邦英雄」となり、文化人や労働者が「社会主義労働英雄」であった。
ややこしい事にスパイや宇宙飛行士は前者であり、兵器開発者は後者として扱われている。
またシヴィロペディアにも書かれている通り、ソ連末期には非常に適当にこの称号が授与されていた。
レオニード・ブレジネフが19回も英雄称号を授けられた件はアネクドート(ソ連的政治ジョーク)で頻繁にネタにされている。
つまりこの教義による偉人生産力の増加とは………?
- 国民皆保険
実は社会保険そのものはドイツが初めて創出し、その理由も「社会主義者に迎合する民衆を抑えるため」という共産主義とは真逆の理由による。
いうまでもなくソ連の保険制度はエリート層にしか適用されず、国民の健康は計画経済と大飢饉の前にもろくも崩れ去っており、あまり関係がない。
しかしこのような制度が共産的と呼ばれやすいアメリカでは事故の際は自己責任の為、莫大な医療費を請求され破産する事も珍しくなかったそうだ。何事もバランスって大事。
また保険制度は諸刃の剣であり、イギリスは国土が狭いのに「ゆりかごから墓場まで」と標榜した結果、ゆりかご代から墓石代まで負担し財政が破綻しかけたこともある。
- 社会主義リアリズム
元々はロシア帝国の検閲を潜り抜けて成立した芸術運動であり、権力や権威に対するカウンターカルチャーとしての側面が強かった。
しかし革命によって共産党の公認芸術になると事情が一転、逆に芸術家に対する軛に堕する事に。ジダーノフ批判などはもう酷かった。
ゲームにおける効果は労働者に対するプロパガンダの量産という「公認」時代のそれが色濃いか。
- 祖国戦争
「祖国戦争」はナポレオン戦役のロシアにおける呼び名であり、ソ連にとっての独ソ戦を指す「大祖国戦争」はこれにあやかったもの。
特に戦場での「すごく格好良い兵士達が悪いナチスをやっつけて、すごく格好良くここに眠る」という感情は強く、そういったものを信じた政治将校の元、
兵士が人海戦術で突っ込んでくるのがソ連式戦術である。ソ連とその威光が崩壊した今でも、「大祖国戦争」は彼らの誇りであり続けている。
- 超高層建築
スターリンはニューヨークの摩天楼に対抗する為に、彼自身の趣味…もとい「社会主義リアリズム」に則った多くの超高層建築物を建造させている。
何とかは高いところが好きと言ってはいけない。
また上で書いた通り、もしくは説明にあるとおり高層建築は自由主義陣営というかアメリカの高層建築が元ネタである。
レベル2
- 五か年計画
五カ年計画は国家主導による強引な重工業化と集団農法を軸とする国家経済の立て直しを目的としていた。
ここから「計画経済」という語が誕生した。Civ4における奴隷制のように多くの労働者を磨り潰して
遂行されたこの計画は、世界恐慌の最中にも関わらずソ連の国力を大いに増強する事に成功。
共産主義陣営に限らず多くの政府や企業に模倣される事になり、共産主義がリスクを孕みつつも世界に広がるきっかけとなった。
…当のソ連がその後「計画」と「計画の遂行」にかまけるあまり空虚な報告に終始したのは皮肉としか言いようがない。
- 党執行部
マルクスが経済学を発表して以後、マルクス主義者はブルジョワジー(資本家階級)ではなくプロレタリアート(労働者階級)が
直接の権力の行使者となれば、不労所得層による労働者への不当搾取が収まり全ての問題が解決すると考えていた。
…のだが、当然そんな頭の悪い話が成立するわけがなく、結局プロレタリアート階級から役人を選抜して教育する事になった。
でもこれって官僚がプロレタリアートの名目で好き勝手できる酷い腐敗国家にしかなりえませんよね。
- 労働者の能力
帝政時代における初等教育の普及率は目を覆いたくなるほど酷いものだったが、ソ連はこれを劇的に改善している。
更に跳ね上がった識字率やプロレタリアートとしての教育は、急激な工業化に多大な貢献を果たした。
という事で、この制度はビーカーを生み出すのが工場でなければ意外と史実に則した効果だったり。名前は適当なんだろうけど。
- 文化大革命
何故こんな効果なんだと思う方も多いだろうが、思想と言う概念が出来たばかりの当時は
世界恐慌とそれに耐えたソ連式経済、マルクス経済学などの複合的攻勢により
その流れを汲んで毛沢東主義や文化大革命を礼賛するインテリさん()が世界各国に結構いた。
なので秩序文明に対する観光力が増大する、という効果はある意味では史実の再現だったりもする。
なお実際の文化大革命はこのゲーム的に言えば都市の文化力とタイルの と を半分にして
宗教施設や文化施設やコロシアム等も全てぶち壊してメリットはほぼ何もないようなそれはもう無惨なものであった。
- 科学アカデミー
「科学的」なマルクス主義を標榜するソ連は、帝政時代のアカデミーをさらに拡充して科学の振興を図っている。
これは一部においては成果を残し、特にスプートニクから続く宇宙工学などは当時の最先端を極めるに至った。
またアメリカとの核関連技術競争にも応じたのはご存知の通りで、世界最大の核兵器「ツァーリ・ボンバ」は文字通り地球を震撼させた。
しかし一方で、ルイセンコ理論のような共産主義的に「正しい」学説によって
真っ当な科学者から先に粛清される、といったどうしようもない話も稀によくあったりした。
- 移住
強制労働無しのシベリア送りである。
ソ連に征服されてしまった民族の多くは、潜在的反逆者と見なされ不毛の僻地に移住させられた。
その数はおよそ数百万人にも及び、しかもその少なくない割合が輸送の途中で客死している。
ゲーム的にショショーニとの相性が抜群なのは彼らの苦難に対する嫌がらせか何かなのだろうか。
レベル3
- プロレタリア独裁
共産主義が蔓延った当時、知識人()の多くは資本主義・官僚社会のグダグダっぷりを見、それに抗しうる共産主義社会がユートピアだと本気で思っていた。
もちろん理論上はすべてが*14人間の手で管理・計画できればムダや事故は起きないのだが、結果どうなったかは歴史が証明したとおりである。
マルクスによれば、プロレタリアートが立法権のみならず行政権や軍事力など権力の全てを掌握・管理・計画する状態が「プロレタリア独裁」である。
その結果が大躍進政策*15やクメール・ルージュによる大虐殺*16といったものであるあたり、主義の問題というより理性の問題のような…?
一方レーニンは「どんな法律によっても、絶対にどんな規則によっても束縛されない、直接暴力で自ら保持する無制限の権力」を「プロレタリア独裁」と定義した。
こちらも、ご多分に漏れず行政権や軍事力を握った共産貴族(ノーメンクラトゥーラ)が他のプロレタリアートを独裁的に支配する事になったのだった。
- 宇宙飛行の先駆者
初めて宇宙に辿り着いた人物がソ連のユーリ・ガガーリンである事は今日でも広く知られている。
そしてボストークロケットを開発してガガーリンを地球の重力から開放したその大技術者こそが、ロシアの誇る天才セルゲイ・コロリョフであった。
大科学者はロケット工学の先駆者でありソ連時代に活躍したコンスタンティン・ツィオルコフスキーを意識したものか。
- 鉄のカーテン
この言葉が広く使われるようになったのはチャーチルがきっかけだが、ゲッペルスも論文で用いたりしているんだそうな。
ソ連による欧州国家の侵略ないし傀儡化が止まったラインを指し、民主主義陣営と共産主義陣営の緊張を象徴する単語として広く用いられていた。
なおベルリンの壁のイメージが強いのだが、境界の全てに物理的な壁があったわけではなかった。
独裁政治(Autocracy)
前説
- 例によってこれも枢軸国(というかドイツ)の考え方を紹介する。
- 第一次世界大戦は初めての大規模な戦争であったが、同時に革命主義者との戦いを含んでいた。
後述する総力戦の概念によりこれまで以上に民衆への被害が大きくなり、戦争を策定する政府への不満が高まったためである。
自由主義は民衆の自主性に任せることで革命の方向性を変え、共産主義は下層階級の権利を押し上げる演出で革命主義者と同化した(抵抗は許されない)。
一方で枢軸国の主体となったドイツは、これら二者よりもはるかに難しい状況から革命主義者を受け止めた。第一次大戦の賠償としてフランスから莫大な金を要求され*17たためである。
- 特にフランスとの確執*18はフランス革命に続くナポレオン戦争(対仏大同盟)や普仏戦争での賠償の苛烈さ*19から続いており、かつての大ドイツを再現させないように多額の賠償をむしり取り、あまつさえ賠償の内容に含まれていないにもかかわらず支払能力を無視して旧ドイツ帝国の経済の心臓地だったルール地方を勝手に攻めこんで占領した"卑怯な行い"も、すべて大ドイツの再勃興を恐れたためである。
- このフランス軍によるルール地方の占領は激烈な焦燥感をもたらし、危険な風潮を巻き起こした。
Civ5でいえば、戦争で大負けした和平の直後、幸福度がギリギリの時に将軍爆弾連続点火で高級資源やアルミや石油のあるタイルを奪われたようなものである。
結果ドイツの民衆は革命どころではなくなり、逆に強く民衆を惹きつけ、かつての大ドイツを再現させフランスら戦勝国の横暴に相対しうる強大な指導者を望むようになった。
それゆえ、民衆はアドルフ・ヒトラーと国家社会主義ドイツ労働者党を歓声を以って迎え入れたのである。
- 翻って見ればある意味ナチスドイツが(従前の絶対王政国家・権威主義国家、すなわちイギリス・フランスに対して)一番革命らしいことをしてそれを貫いたのだが、
その結果は史実というか戦勝国が語るとおりである。
- この枢軸国に加わったのがイタリアと日本であるところは、少なくとも本邦では有名であろう。
イタリアは第一次大戦後のヴェルサイユ条約で期待していたほどの戦果(賠償金・領土)が得られず「栄光なき勝利」と揶揄されるほど国内財政が悪化し、さらに指導者ベニート・ムッソリーニの理論「社会主義的独裁体制」の体現と、当時イタリアの北方すなわちオーストリアを"併合"(アンシュルス)しようとしたヒトラーとの会議を政治利用のために利用したことが合わさり、連合国にも共産国にもつくことができず、枢軸国となったのである。
- 一方で日本が枢軸国に加わった経緯はとても複雑で、至極簡単に言い表すと「日清戦争後、ロシア帝国の南下政策を欧州が容認したため*20」である。
つまり欧州の一方的な秩序論によりオーストリアに手出しできず、後に帝政フランスとロシア帝国の狭間に置かれた低地ドイツと同じ状況*21におかれたからこそ、
日本は欧州(連合国)にもロシア帝国(共産国)にもなびくことができず、思想に拠らずに枢軸国に加わったのである。
レベル1
- 動員
国家が戦争の為に市民を徴発する事自体は古代から行われていたが、国民皆兵による徴兵制が初めて成立したのはフランス革命の最中であった。
国は主権者たる国民が守るべしという国民主権の理念によって選挙権のある全ての男子が徴兵の対象となった結果、ナポレオンは効率的に士気の高い兵士を揃える事ができたのである。
しかし他国もこの方法を踏襲した結果、戦争に巻き込まれる民衆の惨禍は以前とは比べ物にならない程に拡大。
そして国家総力戦の概念や機関銃といった新兵器とが合わさり、欧州は第一次・第二次世界大戦という破局を迎える事になる。
- 国境の防衛強化
今も昔も、国境を越えようとする敵軍を阻んできたのは軍隊の壁である。
物見櫓や砦といった防衛拠点、及びその間にある壁や鉄条網は、あくまで国境を守る軍隊の補助として築かれている事が殆どであった。
とはいえこうした施設そのものも、小規模な蛮族や難民、そして自国からの亡命者に対しては十分な威力を発揮している。
もちろん大規模なものもある時代までは役に立った。フランスのマジノ線などがその例であろう。
- 国民皆保険
上述のようにビスマルク時代のドイツが社会保険の先駆けであり、世界で初めて完全な国民皆保険制度を導入したのもナチスドイツである。
ノルウェーが世界で初めてということもなく、19世紀末期はどの国も社会保険を施行しようとしていた。Firaxisの配慮が伺えるであろう。
これに対抗するために連合国陣営も社会保険を導入せざるを得なくなり、特にイギリスは貴族の多さや植民地を手放したこともあってどんどん財政赤字を重ねていくことになった。
やがて世界人権宣言により世界中に保険制度が認知され、今日に至っている。
- 未来派
「世界の偉大さは、ある新しい美によって豊かになったとわれわれは断言しよう。それは速度の美である。
――散弾のうえを走っているように、うなりをあげる自動車は、《サモトラケのニケ》よりも美しい」
この言葉に示されているように、既成概念の完全破壊と機械化による圧倒的な速さに絶対美を見出す集団、それがイタリアに生まれた未来派である。
彼らは当然のように戦争を求めるファシスト党に接近するのだが、割と保守的なムッソリーニらとは根本的にそりが合わず、後には弾圧さえ被る事になる。
ともあれ未来派が前衛芸術に与えた影響は大であった。まさにアヴァンギャルド――前衛芸術の未来を先走ってしまったのである。
速さこそが文化の基本法則とはよく言ったもの。
- 産業スパイ
「産業スパイ」と言うと企業が企業に対して仕掛けるものというイメージが湧くが、国家による軍需企業へのスパイ活動もこれに含まれる。
例えばイスラエルの戦闘機開発は、モサドがスイス・スルザー社からアター9Cエンジンの設計図を盗み出す事を前提として計画されていた。
2007年にヤマハ発動機の社員が人民解放軍系企業に無人ヘリを違法輸出した容疑で逮捕された事も記憶に新しい。
一部の国が他国の産業モデルの核心部分などを得て"ベンチマーク"するのも広義の産業スパイに含まれるだろう。
- 精鋭部隊
言うまでもなくナチスドイツの突撃隊・武装親衛隊を念頭に置いている。
枢軸陣営の精鋭部隊はボロボロの状態でも過酷な戦場における戦果を要求され、しかも恐ろしい事にこの無茶な期待以上の働きを示し続けてきた。
Civilopediaに挙げられていない所だと、ミハエル・ヴィットマンやクルト・マイヤー等を擁する第1SS装甲師団、坂井三郎や岩本徹三等を擁するラバウル航空隊などが有名。
最近は某ブラウザゲームの影響で第一航空戦隊、通称「一航戦」も急激に知名度を上げつつある。
- 統一戦線
特に在外ドイツ人や反共主義者の中には、破竹の進撃を続ける元絶対王政主義でも共産主義でもないナチスドイツを救世主とみなす人々も多かった。
そして彼らの一部は外人義勇兵として武装親衛隊に参加*22し、様々な理由で敵国に恐れられる精強な部隊となった。
ちなみに大日本帝国軍にも少なくない外国人志願兵が(徴用された人々と共に)参加しているし、フィンランドも冬戦争に際してスウェーデン等の義勇兵を受け入れている。
シヴィロペディアではコミンテルンの「統一戦線」が解説されているが、おそらくはこんな事例をイメージした制度だと思われる。
レベル2
- ナショナリズム
フランス革命によって成立した国民主権の理念は、「ある理念を共有する人々」を一つの国家にまとめる役割も果たした。
これが国家主義(国粋主義)、ナショナリズムの起源である。
この「理念」となったものは実に様々であり、成功したものに限っても皇室や王権、民族、共産主義、キリスト教、イスラーム、個人のカリスマなど枚挙に暇がない。
そして国家の概念が人々の間にある程度浸透すると、今度は国家そのものも「理念」の役割を果たす事になったりもする。
思想と関連して言及するならば、上述のビスマルクがドイツ諸邦を統一する際、プロイセン中心の統一を拒否するバイエルン王国などに対し、民族主義による団結と統一を呼びかけた点にあるだろう。
これにより多民族・多王国であったプロイセン一帯の国民意識は統合され「ドイツ帝国*23」を成したのである。
ただ、この時のナショナリズムを煽る統一方法により後のドイツ皇帝ヴィルヘルム2世は民族主義的な「汎ゲルマン主義」を掲げ、またナチス・ドイツの民族主義にも流用され、世界大戦の遠因の一つとなった。
- 第三の位置
定義としては、資本主義でもなければ共産主義でもないと主張する立場である。
自由資本主義はそれ自身というよりもそれを自認したイギリス・フランスらの過去の凄絶な悪辣振りから嫌う国も多く、
共産主義は共産主義で「みな等しく労働者になれば不満は起きない」という、あまりにも極端かつ無茶なアンチ権威主義だった。
そういうわけで資本主義(連合国)も共産主義(共産国)も嫌う層は一定数存在したのである。
大日本帝国が枢軸国に接近したのも、その原因である清国(中華民国)がおおむね連合国よりであり、またソ連(共産国)とは日露戦争やその原因の一つである不凍港の確保で因縁があったためである。
しかし実際に第三の位置を掲げた集団の殆どはあんまり経済に明るくなかったので、具体的にどういう方向に行くのかを明示できたわけではなかった。
とは言え企業の活動を許可しつつもそこに国家が介入するという傾向はあり、その辺が戦略資源などの増加として表現されていると思われる。
- 総力戦
それ以前の戦争ではその地域の集団の士気を挫いて要求を飲ませて終戦とすることが多く、私掠(フェーデ)や反乱もその鉛直線上にあった。
しかし兵器の発達はそれまで非効率とされた無辜の市民の殺傷をたやすくし、少数の軍隊が大多数の人命を限りなく握ることができるようになった。
特に第一次大戦期は多数の人間を殺すのに効率的な機関銃と多数の人員や兵器を牛馬に頼らず輸送できる鉄道が本格的に登場し、
さらに第一次大戦の基本戦術であった塹壕戦が防衛側に非常に有利であった*24こともあり、当時まだ歩兵が主力だった戦争で攻め手側に甚大な戦死者を出し、厭戦気分が蔓延した*25。
またナショナリズムによって文化の境界が確定的になると、その文化に属する地域は必然的に総力を挙げて戦争に参画することを求められた。
当然戦争に負けたほうは巨額の賠償と非常な屈辱が待っており、それを第一次大戦とヴェルサイユ条約で究極なまでに味わったドイツは国力を総動員して第二次大戦に臨んだ。
結果スパ帝の言葉を借りれば「国家そのものを戦争する機械に作り変え」た事になり、国家全体とそこで国のために働く人民も攻撃の対象となったのである。
- 警察国家
元々は法治国家との対立概念であり、国家が法律なく警察権を行使し、犯罪を取り締まる性質を示すものである。
だがこれの端緒となったナチスドイツら全体主義国家の性質により「国の方針に従わない人間を軍隊が逮捕する」という風にとらえられることが多い。
とはいえ資本主義と共産主義に揺れていたかの時代では、どの国も(蔭ながらでも)国家が警察権を行使することは珍しくなかった。
本邦でも明治~大正期に憲兵隊が警察権力を司っていた時期があり、甘粕事件など思想犯の追走捕縛に躍起になっていた時期があった。
- 軍事主義
説明の通り軍事力による国家の保全を中心とする主義であり、これは兵器の高性能化によってどんどん加速していった。
思想や民族の違いによりたやすく発砲され虐殺される第一次大戦期ではどの国家も多かれ少なかれ軍事、敵を殺すための備えに比重を置いていた。
しかし強大な軍事力は恐怖だけでなく自国と国防への安心感も起こすものであり、その辺りが幸福の増加として扱われていると思われる。
日本でも全く性質が違うとはいえ自衛隊が国民に与える安心感は(たとえそれが民間救済力がメインであっても)大であろう。
- 電撃戦
戦車の機動力による司令部や敵中枢への高速進撃、無線による軍事情報の共有と指揮能力の拡充、そして前線の無線情報による爆撃機の航空支援。
こういった要素により敵の士気を挫くか混乱させ、敵軍の撤退を許す前に歩兵が進撃して撃滅する。これが電撃戦の基本思想である。
Civ5ではまず騎兵を後方都市に投げて労働者を捕まえたり鉱山を破壊し、国力が減った隙に本隊が進撃するようなものだ。
特にその鮮やかな成功として知られるナチス・ドイツのフランス侵攻は、戦力で上回る連合軍を一ヶ月で粉砕して世界を大いに驚嘆させている。
しかしグデーリアンによって構築された電撃戦は他国の徹底的な研究を受け、遂にはバグラチオン作戦においてドイツ自身がその餌食となるに至った。
レベル3
- クラウゼヴィッツの遺産
「戦争とは相手を打倒して自身の目的を強要する政治の一手段である。それ故に政治に従属するし従属させなければならない」
クラウゼヴィッツの戦争観を乱暴に要約するとこんな感じになる。彼のこのような戦争の概念についての理論は今日でも広く学ばれている。
一方でターン制限がかかるのは、「戦争論」における具体的な方法論は非正規戦の拡大や核兵器によって陳腐化しつつもある事の反映か。
ちなみにCiv5では全文明の首都を手に入れれば全ての問題が解決するので、現実よりも「絶対戦争」のハードルが大分低くなっている。戦争を! 一心不乱の大戦争を!!
- 個人崇拝
フランス革命以前でも個人のカリスマが国家をまとめあげたケースは数多くあったが、これに大衆メディアを組み合わせて名を挙げた人物はやはりヒトラーとゲッベルスである。
…が、個人崇拝が国境を跨いだ例としてはスターリンと毛沢東の方が適切だったりもする。
スターリン主義や毛沢東主義は色々な国で崇拝されたりしたが、ヒトラー主義と言われてもピンと来ない*26。
- 砲艦外交
クラウゼヴィッツによれば「戦争は政治の一手段である」が、逆に言えば政治面で勝利できれば不必要に殺しあう必要はない。
そして軍事力や戦意に圧倒的な差があるように見せかければ、戦う前に相手の闘志を折る事もできる。『孫子』にもそう書いてある。
という事で、軍事主義独裁国家はしょっちゅう軍事パレードを行ったり他国の領海や領空に侵犯したりしてその軍事力をアピールするわけである。
とはいえ書かれているように元々は先住民への抑圧として生み出されたものであり、その点で砲艦外交は枢軸国以外の国でも行っていた。
アメリカでも南米諸国へ砲艦外交を行った「棍棒外交(Big Stick Diplomacy)」として有名である。
余談
もしこの三国の状況をCiv5で再現しようと思っても、実際は不可能である。
例えば、日露戦争勝利の一端であり、また大日本帝国が敗北した一因である「兵站」の概念が存在しないのである。
「越えようと思えば戦車で森や川を越えられる」というのも、ドイツのフランス侵攻を再現するには難しい要因となる。
既得タイルの授受が難しいのも、三国干渉やミュンヘン協定を表現する点で難しいことになっている。
ロシア革命の原因である「膨大な戦死者による不幸」「敗北による不幸」、中国の緩やかな分割統治状況も表現できない。
ドイツが反骨心を芽生えさせた原因であるヴェルサイユ条約も、特に「和平交渉で相手のゴールド(ターン毎ないし一括)をマイナス域まで搾り取る」ことができないため難しい。
できるとすれば、ロシア文明に史実通りの土地と初期で高い軍事力と極めて好戦的なAIを積んだカスタムMODくらいであろうか。
コメント
- テストです。 -- サーバ管理人?
- なにはなくとも、このテキストが消えなくて良かった良かった。管理人様は作業お疲れ様です。 -- 天トロ?
- ピオネールって「チェブラーシカ」に出てたやつかな? --
- これは面白い --
- 乙です管理人さん。揉めそうな歴史または思想ネタは、これくらいの扱いがちょうどいいかと思います -- いつもはROM?
- 荒れる経緯は想像付いてしまうからしょうがないけど、解説はよく書けてる --
- 秩序ORDERは命令って意味もあるし一党独裁の体制って意味合いかな。なお修道会という意味もある。ロシア正教に替わるマルクス主義の結社が共産党っていうね --
- 面白い --
- 国防の防衛強化でマジノ線が役立ったとあるけど、役立ってないじゃん・・・ --
- 敵の侵攻ルートを限定させたのだから役立ったよ。アルデンヌの森を通るのが予想外だっただけで。 --
- なんか俺政治わかってますよ感が鼻に付く --
- 俺政治わかりませんアピールはいらないです --
- 鼻につくからなんなの? 俺が気に入らないから消せっての? お前スターリンかヒトラーなの? --
- いや個人的に厨二がカッコつけて書いた感があるってだけだからそこまで気にしなくてもいいよ --
- 俺には君の方がケチつけてるおれかっけーな厨二に見えるけど個人的意見だからそこまで気にしなくてもいいよ --
- ↑2(5) じゃああなたこそがカッコつけてないありのままの、アル中の靴職人の息子がスターリンとなり私生児の元靴職人の息子がヒトラーとなってしまったあの混沌の時代の思想史を書いてください、どうぞ。ちなみに私は「思想という新たな対立要因が実装されたCiv5だからこそ、現代に続く(特に枢軸国の)確執にも2000年の理由と必然がある」という願いを込めて書いています。それを中二病というなら言うのが2500年―ヘロドトス「歴史」―遅いようですね。 -- 下の注釈をほとんど書いた人?
- 思想の元ネタが政治じゃないのなら、一体なんだというのか --
- 確かにCivilopediaの方が解説の質は良いが、この量の文章を書いてくれたにも関わらず厨二の一言で済ませるのは非礼の極みでは? --
- 面白い。書いてくれてありがとうございました。 --
- スターリンが権力欲の権化みたいに書いてあるけど、実際にはレーニンからして権力欲と名誉欲の権化みたいおっさんだからね…。 --
- 総力戦と言えばヨーゼフ君の君達は総力戦を望むか?が好きだなあ --